第12章

田中尚哉は加藤柚奈を病室まで送り届けると、そのまま立ち去ろうとした。だが、眠っているはずの柚奈がふいに目を開ける。

彼女は彼の手を掴んだ。

「行かないで……怖いの……」

尚哉は一瞬だけ動きを止め、柚奈の手をそっと布団の中へ戻した。指先まで丁寧な所作に、柚奈は胸が熱くなり、感動した目で彼を見上げる。――けれど、ぶつかったのは尚哉の底の見えない眼差しだった。

「自分の立場は分かっているだろ。口にしていいことと悪いことがある」

柚奈の顔から血の気が引く。

冷水を浴びせられたみたいに、作り物の優しさから一瞬で引き戻された。

「ちゃんと休め。子どもを守れ。お前に残された機会は一度きりだ」...

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